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寸法を変えると成り立たなくなる所

投稿日 2026年9月30日 ・ 確かめた日 2026年10月5日

継手 Web では、寸法を動かすと、まず寸法の組み合わせが継手ごとの条件を満たすかを式で調べ、満たすときだけ形を作り直して検査する。満たさない寸法では「この寸法では成り立ちません」と表示し、当たった条件を文で示す。そのあいだ画面には、直前の成り立つ寸法の形が残る。本記事では、この判定が何を調べているかと、判定に当たりやすい寸法から読み取れる形の要を扱う。判定は3Dの形についての検査であり、実物の強さを調べるものではない。

判定の中身:形としての検査

どの継手にも共通する検査は四つある。部材どうしが重なっていないこと、部材の体積が合っていること、部材がそれぞれひとつながりであること、寸法が指定どおりに作れていることである。手順を持つ継手では、これに加えて、部材を手順どおりに動かして抜けるかも確かめる。

継手ごとの条件は、寸法の組み合わせについて「この差を残す」「この肉を残す」という形で書かれている。下限の値は、継手 Web が目安として置いたもので、資料に載っている数字ではない。そのため本記事では値を挙げない。

蟻:頭と首の差

蟻継ぎや蟻掛けの条件で最初に出てくるのは、頭が首より十分に広くなければならない、というものである。頭が首と変わらなければ、蟻はただの角材の突起になり、引けば抜ける。

実物の蟻も、鳩の尾のように先へ広がる形である[2][3]。逆ハの字に突起を作ることで材が抜けにくくなるとされる[1]。つまり蟻の要は、首の幅と頭の幅の差にある。

一方で、頭を広げるほど蟻穴の両脇に残る材は減る。継手 Web が蟻穴の両脇の肉に条件を置いているのは、この限界を判定するためである。これとは別に、蟻の下端でも首の幅を残す条件があり、首を細くしたり勾配を大きくしたりすると当たる。鎌継ぎでは、頭の先が首より十分に広くないと鎌の形にならない、という条件が付く。

栓と目違い:ずらして外す

金輪継ぎと尻挟み継ぎでは、目違い(小さな段)の長さが、込み栓の幅より短くなければならない。栓を抜いたあと、上木を栓の幅だけ材の向きにずらすと、目違いが相手の穴から外れる。この条件は形を作る前に調べられ、満たさない寸法は「この寸法では成り立ちません」と判定される。

実物の金輪継ぎも、鎌の木口に T 字形の目違いがあるため上から落とし込めない[4][5]。アラキ工務店の解説では、組んだあとに栓の分だけ軸の方向へずらすとする[4]。継手 Web では、栓の幅と目違いの長さの大小を、栓を抜いて外せるかどうかの条件として判定している。

尻挟み継ぎでは、目違いを材の幅と高さの中ほどだけに付けて、材の中に隠す。そのため、目違いの上下と両脇に肉を残す条件が加わる。山辺豊彦氏監修の資料に基づく解説では、金輪継ぎとは目違いの合成の仕方が異なるだけで、側面に目違いの形が現れないため意匠に優れるとする[6]。

追掛け大栓継ぎ:顎と目違いの取り合い

追掛け大栓継ぎには、下木の目違いの外側に上木を残す、という条件がある。追掛けの斜めの変化や目違いの厚みを大きくするほど、また顎の段差を小さくするほど、目違いの外に残る上木の材が減るためである。

実物でも、追掛継の構造上の特徴は顎と接合部の繊維方向の面圧にあるとされ、顎の幅を増やすと支圧の面積は増えるが、大きくしすぎると継手の中央部に残る幅が小さくなると考察されている[7]。継手 Web の検査も、寸法を動かすと別の部分に残る材が変わるという関係を判定している。ただし見ているのは材が残るかどうかであり、報告のように面圧を計算しているわけではない。

穴の脇に残す肉

ほぞ穴、栓穴、蟻穴、鎌穴、竿穴など、穴を持つ継手と仕口の条件には、穴の周囲の肉を残すものが含まれる。穴や段を作るほど周囲の材は減るためである。条件文は、たとえば長ほぞ差し鼻栓打ちで、ほぞの先が割れて抜けないように、というように、肉を残す理由を添えている。

成り立つことと強いこと

継手 Web が判定するのは、重なり、つながり、抜けるかどうかという形の成否である。成り立つ寸法であることは、実物がその寸法で強いことを示さない。実物の寸法と強さの関係は、実験と設計式で扱われる課題であり、たとえば追掛継では、材せいと顎幅によって回転剛性が変わることが4点曲げ試験で調べられている[7]。本記事は、その強さの話に踏み込まない。

3D で見る

出典

本文で番号を付けていない資料は、事実確認のために参照したもの。

  1. 「蟻(継ぎ)」建築士用語辞書、東建コーポレーション
    https://www.token.co.jp/estate/archipedia/word.php?jid=00015&wid=27814&wdid=01
  2. 「腰掛蟻継」京町家の木組み、アラキ工務店
    https://www.kyoto-araki.jp/kyomachiya/kigumi/koshiari.html
  3. 「蟻掛」デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典、コトバンク
    https://kotobank.jp/word/%E8%9F%BB%E6%8E%9B-428210
  4. 「金輪継」京町家の木組み、アラキ工務店
    https://www.kyoto-araki.jp/kyomachiya/kigumi/kanawa.html
  5. 「金輪継(かなわつぎ)【継手】」なんば建築工房
    https://www.nanbakenchiku.co.jp/kiji/blog/9726/
  6. 「珍しい継手」DEF ブログ
    https://a-def.com/defblog/6676
  7. 小林良洋・蒲池健・稲山正弘「追掛継の曲げ性能」日本建築学会構造系論文集 76 巻 669 号、2011
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/76/669/76_669_1943/_pdf
  8. 「寄せ蟻」デジタル大辞泉、コトバンク
    https://kotobank.jp/word/%E5%AF%84%E3%81%9B%E8%9F%BB-654365
  9. 「寄せ蟻(よせあり)」匠 総合事務所 建築用語辞典
    https://kenchikuyogo.com/?page_id=11368
  10. 「追掛大栓継」京町家の木組み、アラキ工務店
    https://www.kyoto-araki.jp/kyomachiya/kigumi/okkake.html
  11. 「追掛け(大栓継)」建築用語集(kenchikuyogo.com)
    http://kenchikuyogo.com/?page_id=2791
  12. 戸田正彦「伝統的木造住宅の接合部の強度性能(1) 継手の引張性能」林産試験場報 541 号、2012
    https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030831000.pdf
  13. 「金輪継ぎ」ttarchi
    https://ttarchi.com/blog/%E9%87%91%E8%BC%AA%E7%B6%99%E3%81%8E/
  14. 「追っ掛け大栓と金輪継」奈良古民家 ameblo
    https://ameblo.jp/narakominka/entry-12452929071.html
  15. 「金輪継」Wikipedia 日本語版
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%BC%AA%E7%B6%99
  16. 「尻ばさみ継ぎ」大工のひとりごと、エキサイトブログ
    https://sumika2008.exblog.jp/18140157/