木造の継手や仕口では、栓や楔を併用して接合を固めることがある[10]。本記事では、便宜上これを栓(込み栓・大栓・鼻栓)、楔、車知の三つに分け、打ち込む向き、締まる仕組み、何を止めているか、どの継手や仕口で使われるかを扱う。
栓:貫いて抜けを止める
込み栓は、柱に通した貫などを固定するために、柱の側面から打ち込む小木片である[1]。下山氏の解説では、ほぞを柱に貫通させ、柱の側面から込み栓を打つと、栓によってほぞが抜けなくなるとする[3]。
栓は、ほぞを差し込んだ相手の材の側面から打つ。上の例では相手が柱である。継手 Web の長ほぞ差し込み栓打ちは、柱の下端の長いほぞを土台などの横架材に差し込み、横架材の側面から込み栓を打つ形で、ほぞと栓の材が上の例とは逆になる。
鼻栓は、ほぞの先端を柱の外へ出し、柱の面に沿って栓を打ってほぞを固定する方法である[3]。建築用語辞典では、込み栓が柱に打つのに対し、鼻栓は貫通したほぞに打つ点が異なるとし、鼻栓は末広がりに作る細い木で、断面は長方形のことが多いとする[2]。
大栓は、追掛け大栓継ぎで使われる栓である。建築用語辞典は、追掛け大栓継ぎを、追掛け継ぎに横から栓を打ったものとし、栓を打たなければ追掛け継ぎであるとする[8]。下山氏の解説では、栓は肉厚の厚いほうから打ち、2 本の栓は打つ向きが違う[3]。顎の部分には滑り勾配が付き、継手が納まるにつれて胴付き部分が密着する[8]。金輪継ぎも、材を組み合わせて栓を差して固定する継手である[3][9]。
栓の効果については、戸田氏の試験報告に、腰掛け鎌継ぎで込栓を使うと最大荷重と靭性がともに向上したという記述がある[11]。
大栓の穴の位置をずらして引き締める方法(ドロー)については、確認できた範囲では資料に記述がなかった。
楔:打ち込んで固定する
建築用語辞典は、楔を、二つの材を割り裂くときに打ち込む矢状のものとし、打ち込むことで二つの部材を緊密に固定できるとする[4]。貫を柱に通す工法では、楔で貫を固定する[5]。亀屋工務店の施工記録では、貫を通した柱の穴にすき間があり、そこへ楔を打ち込んで貫を固定する。一番下の楔は貫の下に打つ[12]。国土交通省の公共建築木造工事標準仕様書は、貫を柱に差し通し、両面から楔で締めるとする[14]。日本建築学会の論文は、柱と貫の仕口の楔として普通楔・斜め楔・重ね楔を扱い、貫の上端に左右で同じ形の楔を打つ普通楔を最も一般的な形式とする[13]。
下山氏の解説には、ほぞを柱に貫通させ、先端に楔を打つ割り楔もあり、ほぞの先端が広がって抜けなくなるとの記述がある[3]。
木製の楔は、木取りを誤ると、叩いたときに木目に沿って壊れる[4]。
車知:斜めに打って引き寄せる
車知は、長方形断面の薄くて長い栓で、堅木が使われ、一般に欅が用いられると丸晴工務店は説明する[7]。工房通信 悠悠は、二つの材を継ぐにあたり、せん断面の間に斜めに車知道(原文は車地道)を刻み、車知栓を打つとする[6]。下山氏の解説でも、車知栓の道は斜めに刻まれ、栓を打つと材が引き寄せられて圧着する[3]。
竿車知継ぎでは、竿ほぞとほぞ穴の両端に車知栓を打って締める[7]。丸晴工務店は、打ち込み加減を調整したり、後から打ち増したりできるため、継手の胴付き部分に隙間を空けたくない場合に適しているとする[7]。
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出典
- 「込栓」デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典、コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E8%BE%BC%E6%A0%93-1425978 - 「鼻栓(はなせん)」匠 総合事務所 建築用語辞典
https://kenchikuyogo.com/?page_id=8981 - 下山眞司「第Ⅴ章 胴差・梁・桁の継手、通し柱との仕口」、ブログ「木造軸組工法の基本と実際」(Ameba ブログでの再掲)
https://ameblo.jp/archi1217ss-7/entry-12926333839.html - 「楔(くさび)」匠 総合事務所 建築用語辞典
https://kenchikuyogo.com/?page_id=3790 - 「貫工法(ぬきこうほう)とは?」キノマチウェブ
https://kinomachi.jp/6676/ - 「車知栓(しゃちせん)による三方留」工房通信 悠悠
https://koubou-yuh.com/blog/?p=10214 - 「〜車知継ぎ〜 日本の伝統的な継手の技術」丸晴工務店
https://www.marusei-j.co.jp/%E3%80%9C%E8%BB%8A%E7%9F%A5%E7%B6%99%E3%81%8E%E3%80%9C-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%9C%A8%E5%B7%A5%E6%8A%80%E8%A1%93/ - 「追掛け(大栓継)」匠 総合事務所 建築用語辞典
http://kenchikuyogo.com/?page_id=2791 - 「金輪継」Wikipedia 日本語版
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%BC%AA%E7%B6%99 - 「継手・仕口とは」キノマチウェブ
https://kinomachi.jp/1701/ - 戸田正彦「伝統的木造住宅の接合部の強度性能(1) 継手の引張性能」林産試験場報 541 号 北海道立林産試験場
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030831000.pdf - 「築86年 木と土の家(5)」亀屋工務店
https://www.kameya-web.com/2019/11/18/%E7%AF%8986%E5%B9%B4-%E6%9C%A8%E3%81%A8%E5%9C%9F%E3%81%AE%E5%AE%B6-%EF%BC%95/ - 「伝統木造社寺建築物における楔を有する柱-貫仕口の履歴特性に関する実験的研究」日本建築学会構造系論文集 84 巻 758 号(2019)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/84/758/84_541/_article/-char/ja - 「公共建築木造工事標準仕様書 令和7年版」5.6.10 貫、国土交通省官庁営繕部
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001888858.pdf - 羽生田ほか 同論文の本文(著者所属の亀山建設の公開)
https://www.e-kameyama.jp/common/images/upimages/papers/32.pdf