継手は、受ける力の種類と寸法によって壊れ方が変わる。本記事では、強度試験の報告から壊れ方の型を整理し、どの継手でどの型が出やすいかを述べる。木の乾燥による緩みは別の記事で扱うため、ここでは荷重による壊れ方と変形を対象とする。
壊れ方の型
試験報告に現れる壊れ方は、次の五つに分けられる。各試験の条件は、初出の箇所に添える。
- せん断: 引掛け部分が引張でせん断される。荷重が急に下がる脆性的な壊れ方で、腰掛け鎌継ぎの主な壊れ方である[1][2][3]。
- めり込み: 顎の面が繊維方向に互いにめり込んで圧壊する。荷重が急には下がらず、粘る。腰掛け鎌継ぎの引張[3]と、追掛け継ぎの曲げ[4]で確認されている。
- 栓の破壊: 戸田氏の引張試験(スギ、繰り返し引張)の金輪継ぎで、栓の横圧縮変形と栓のせん断破壊が見られた[2]。
- 割裂: 横引張力やせん断力による破壊で、an-sd の解説は繊維方向に沿って引き裂かれるとし[8]、木材学会誌の論文は繊維と直交方向に引き裂かれる破壊と定義する[10]。内田氏らの引張試験(スプルース)では、腰掛け蟻継ぎで繊維直交方向の圧縮応力が生じ、女木が割裂した。車知を使う継手でも、車知が回転して女木の割裂や目違いでの割れを招いたとされる[1]。小林氏らの 4 点曲げ試験(ベイマツ、大栓を除いた追掛け継ぎ)では、材背を変えた試験体のすべてで、継手両端の割裂が最初に生じた[4]。追掛け大栓継ぎの引張でも、偏心による目違い部からの割裂が一部の試験体に見られた[2]。スギの柱の金輪継ぎを模した曲げ試験(文化庁)でも、補強なしの試験体は頂部の接触部分で割裂破断した[5]。
- 曲げ破断: 継手そのものが曲がって折れる。小林氏らの試験で下木の曲げ破壊が[4]、文化庁の試験で木栓と鋼製バンドを補強として併用した試験体の継手の根元の曲げ破断が[5]報告されている。
寸法で変わる壊れ方
同じ継手でも、寸法によって型が移る。戸田氏の試験では、金輪継ぎも追掛け大栓継ぎも、材せいが小さいとせん断破壊が多かった。材せいが大きくなると、金輪継ぎでは栓の横圧縮破壊や栓のせん断破壊が、追掛け大栓継ぎでは掛かり面の繊維方向の圧縮破壊が増えた[2]。金輪継ぎの耐力は、同じ材せいで継手長さを増しても上がらず、材せいを増すと上がった[2]。
木島氏らの腰掛け鎌継ぎの引張試験(ベイマツ、単調引張)では、せん断面積を受圧面積で割った比が 9 程度を境に、上回るとめり込み、下回るとせん断で壊れる傾向があった。めり込みで壊れる範囲では鎌あご幅を、せん断で壊れる範囲では鎌頭長さを大きくすると最大耐力が上がり、どちらも一定の寸法を超えると頭打ちになった[3]。
小林氏らの試験では、材背 120 mm の試験体は割裂のあと脆性的に壊れた。塑性率(終局変位を降伏変位で割った値)の平均は、材背 120 mm で 1.32、180 mm で 5.82、240 mm で 4.44、300 mm で 5.15 である。180 mm と 300 mm は顎のめり込みで粘ったが、240 mm は比較的脆性的に顎のせん断破壊で終局した[4]。
継手の形による違い
内田氏らの試験(スプルース、10.5 cm 角、単調加力)では、引張の最大荷重が概ね略鎌系(金輪継ぎ・追掛け継ぎ)、鎌系、蟻系の順に小さくなった。追掛け継ぎが 3,010 kg、古い実例にならった金輪継ぎ(古金輪)が 2,750 kg、腰掛け鎌継ぎが 1,087 kg、腰掛け蟻継ぎが 400 kg である。ただし、車知を使う古金輪は 1,323 kg で、鎌系と同程度まで下がった[1]。単位は報告のとおり kg(重量キログラム)である。
曲げ試験では、継手なしの 8,283 kg に対し、今日の標準寸法の金輪継ぎが 1,878 kg、追掛け継ぎが 1,443 kg、腰掛け鎌継ぎが 831 kg、腰掛け蟻継ぎが 220 kg と、すべて大きく下がった[1]。略鎌系の曲げ試験では、継手が回転して胴付き面がずれ、目違い周辺の割れが生じることが、この系統に特有の壊れ方として挙げられている。側面上部の割れは鎌系でも最大荷重の後に生じた[1]。
栓の働きと緩み
荷重による緩みについては、試験で測られた継手の変位を見る。戸田氏の試験の荷重と変形の関係の例(第 5 図)では、金輪継ぎの最大荷重時の変位が 10 mm に達し、同じ図の他の継手より大きかった。栓の横圧縮変形が大きく生じたためとされる[2]。内田氏らの引張試験では、腰掛け蟻継ぎの比例限度の荷重が 198 kg と、追掛け継ぎの 2,525 kg より低く、最大荷重時の変位は 8.0 mm で、追掛け継ぎの 3.8 mm、腰掛け鎌継ぎの 2.8 mm より大きかった[1]。試験が違うので、戸田氏と内田氏らの変位は比べない。
文化庁の試験では、木栓を補強として追加すると、弱軸方向で割裂を助長した[5]。多幾山氏らは、金輪継ぎの引張の降伏耐力を、栓の全面横圧縮、顎から先のせん断破壊、目違いの開きによる割裂のうち最小のもので決まるとモデル化している[6]。戸田氏の試験で見られた破壊(金輪継ぎでは栓の横圧縮やせん断、追掛け大栓継ぎでは目違い部からの割裂)と名称の上では重なるが、試験との対応を述べた記述は確認できなかった。
下山氏の解説には、雇い竿シャチ継ぎや通し柱の仕口の説明の中に、シャチ栓・込み栓・割り楔は木の弾力と復元性を利用するため年月を経ても緩みが生じにくいとする記述がある。別の項では、込み栓などをきつめに打ってあるか否かで強度に大きな差が出るとも書いている[7]。
なお内田氏らは、乾燥の影響を含む実験も計画段階で考えたが、形と強度の関係に絞るために見送った[1]。
3D で見る
出典
- 内田祥哉ほか「在来構法の研究(2) 木造継手の強度剛性試験」住宅建築研究所報 9、新住宅普及会 住宅建築研究所(現・住総研)、1983
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jusokenjo/9/0/9_8101/_article/-char/ja - 戸田正彦「伝統的木造住宅の接合部の強度性能(1) 継手の引張性能」林産試験場報 541、北海道立林産試験場、2012
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030831000.pdf - 木島裕行・隈澤文俊「腰掛鎌継ぎの引張強度特性に関する研究」日本建築学会技術報告集 25(59)、2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/25/59/25_155/_pdf - 小林良洋・蒲池健・稲山正弘「追掛継の曲げ性能」日本建築学会構造系論文集 76(669)、2011
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/76/669/76_669_1943/_pdf - 「慈眼寺本堂における柱継手(金輪継)補強の性能試験」文化財建造物構造実験データ集、文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/hogofukyu/pdf/92048001_16.pdf - 多幾山法子・戸川楓子・千野詠子「既存木造躯体への根継ぎが力学特性と固有振動数に与える影響」日本建築学会構造系論文集 88(810)、2023
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/88/810/88_1262/_pdf - 下山眞司「第Ⅴ章 胴差・梁・桁の継手、通し柱との仕口」(Ameba ブログでの再掲)
https://ameblo.jp/archi1217ss-7/entry-12926333839.html - 「木の割裂きとは?切り欠きを考慮した部材耐力の計算方法についても解説」an-sd.jp
https://an-sd.jp/%E6%9C%A8%E3%81%AE%E5%89%B2%E8%A3%82%E3%81%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E5%88%87%E3%82%8A%E6%AC%A0%E3%81%8D%E3%82%92%E8%80%83%E6%85%AE%E3%81%97%E3%81%9F%E9%83%A8%E6%9D%90%E8%80%90%E5%8A%9B%E3%81%AE/ - 「木材の破壊形式とは?木材破壊の形式、要因、今後の活用を解説!」archifrom
https://archifrom.com/2024/12/15/%E6%9C%A8%E6%9D%90%E3%81%AE%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E5%BD%A2%E5%BC%8F%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E6%9C%A8%E6%9D%90%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%AE%E5%BD%A2%E5%BC%8F%E3%80%81%E8%A6%81%E5%9B%A0%E3%80%81%E4%BB%8A/ - 落合陽・青木謙治・稲山正弘「木材の割裂破壊耐力推定のための基礎的研究(第三報)」木材学会誌 64(5)、2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwrs/64/5/64_195/_pdf/-char/ja - 「財団概要」住総研
https://www.jusoken.or.jp/history.html